「百年の計 富士山に禄を返そう」

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静岡県・御殿場クラブ(井上高臣会長/100人)がそんな壮大な計画に着手してから、既に十年が過ぎた。 富士登山道の一つ御殿場口は、砂走りの下山ルートとして多くの登山者に利用されている。御殿場口のある富士山南東斜面は、一七〇七年に起こった宝永山の噴火によつて森林が埋もれ、荒れた砂原に変わった。噴火から三百年を経て、砂れき地に育つフジアザミやイタドリといった植物が進出しているものの、強風や雪崩などの過酷な自然条件の下で、再び森林へと移り変わる自然の営みは遅々として進んでいない。更に、やっと根付いた植物がオフロード車の侵入によつて踏み荒らされる被害も後を絶たない。

御殿場クラブの「緑を返す」運動は、富士山に自生している植物を採取、育苗し、再び山に返すことで、荒涼とした砂れき地に緑を復元させようというものだ。植え付けるのはバッコウヤナギ。着生すれば、根を張って砂の流れを止め、落ち葉が腐葉土となって他の植物が生育。それが草原となって、やがては安定した森を形成する。砂れき地から森林へと向かう植物の自然の移り変わりを、手助けしようという試みだ。 毎年、十月八日のライオンズ奉仕デーに富士山に自生するバッコウヤナギの枝を採取。一年半をかけて約二千五百本の苗に育て、御殿場口新五合目付近に植え付ける。八年前からは、地元の御殿場市立西中学校が協力を申し出て毎回参加。六月の植え付け作業には、ライオンズ閑係者と、中学生を始めとするボランティアら三百人余りが「富士山に緑を」の願いを込めて汗を流す。
計画を発表した当初、周囲には「苗木を植えることで、どれほどの効果があるのか・・・」と、疑問視する声が多かったという。せっかく植えた苗木が、大規模な雪崩によって押し流されてしまったこともある。しかし、一年目にはほんの小さな点でしかなかった緑が、今では広範囲にわたり、はっきりと目につくようになった。斜面に整然と並んでいる苗木を見て、関心を寄せる登山者や観光客も多いと言う。「苗を育てる畑作りに始まり、すべてが会員の手作り。植栽には根付きやすいように丸太で苗床を作るなど、知恵を出し合ってここまでやって来た」と井上会長。クラブではこのアクティビティのために三百万円の基金を積み立てているほか、毎年度、前幹事を環境委員長に任命するなど、万全の体制で取り組んでいる。

一九九三年、六月五日の「環境の日」制定を記念したテレビ番組で、御段場クラブの取り組みが静岡県のモデルケースとして紹介された。また、九八年には県緑化功労賞を受賞。その活動が呼び水となって、県や他の民間団体も相次いで富士山緑化への取り組みを始めている。
地道で継続的なアクティビティによつて、御殿場クラブは富士山の環境保全に取り組む団体として、広く市民に認知されている。全国的に会員減少が問題となっている中で、着実に会員を増やしているのも、奉仕団体として明確な目標を掲げた活動が共感を得ている証しだろう。
「百年の計」は残り九十年。富士山に豊かな森が復元される日を夢見て、御段場クラブの挑戦は続く。